過去10年のドル円推移から読み取る世界情勢から見た「日本円」の2つの顔
日本円は「安全資産」と言われている通貨ですが、世界から見るとどのように見られているのでしょうか。 そもそも、なぜ円の価値は上がったり下がったりするのでしょう。 まずは、円高・円安の仕組みをしっかりと理解し、過去のドル円推移から「日本円」の価値を探ってみましょう。 過去10年のドル円推移の乱高下は、日本円の立ち位置を理解するのに役に立ちます。
過去のドル円推移から「日本円」を読み取りましょう
2007年8月に起きたサブプライム問題を発端に、2008年のリーマンショック、2009年のギリシア経済破綻など、世界経済で大きな動きが起こる度に円高方向へ進み、一時期は1ドル76円という史上最高値となりました。その後、アベノミクス金融緩和などから円安へと動き、124円近くまで戻るなど、過去のドル円推移は大きな変動を起こしています。
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一つの物を1ドルで76円買える場合と、1ドルで124円買える場合を比べた場合、前者は相対的に円の価値が高く、後者は円の価値が下がっています。 これにはどのくらい資産価値の変化があるのでしょうか。76ドル ÷ 124ドル × 100 = 61.29...%このように円の価値は60%以上目減りしています。 これが日本円のみを保有するリスクであり、額は同じでも資産価値が下がる理由なのです。
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そもそもなぜ日本円の価値は変動しているのでしょうか
円高・円安になるのは不思議なことではありません
日本円の価値は、私たちが購入している物と同じく、需要と供給で価値が変わり
ます。例えば、スーパーで売られる野菜が昨日よりも高い、安いことについては
なにも不思議ではありません。人参であれば、不作により供給が少ない状況で、
需要が多ければ価格は上がります。逆に豊作で供給が過剰だと、人参の価格は下
がります。為替市場でも基本的に同じ原理が働き、日本円の価値が上がるのも下
がるのも、円の需要供給が多いのか少ないかによって変わるのです。
秒単位で為替レートが変動している外国為替市場
1秒毎にお金の相場が変動している為替市場の様子をニュースなどで見たこ
とがある方もいるかと思います。なぜ、円の価値は毎秒変動しているのでし
ょうか。先ほどスーパーでの市場例を挙げましたが、日本円が売買される市
場は、「外国為替市場」や「インターバンク」と呼ばれ、ネットや電話で取
引が行われる市場です。この市場に参加できるのは金融機関に限定されてお
り、世界中の参加者が1秒以下の世界で次々と売買を繰り返している為、為
替レートは目まぐるしい変動を続けているのです。
世界情勢の様々な要因が需要の決め手となります
基本的には、通貨価値は需要がどの程度大きいかで決まりますが、世界規模の市場には様々な思惑をもった参加
者も集まっているため、通貨の需要は、世界情勢の様々な影響を受けています。そのため、今後の円高・円安傾向は、
予測を立てられても常に先行きは不透明で、誰にも確実なことは分かりません。過去の推移や現在の経済情勢を元に
分析しつつ、将来への予測を立てるしかありません。
- 為替レートを変動させる要因例
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- 景気動向
- 貿易収支
- 要人発言
- 金利動向
- 為替介入
- 経済指標発表
- 投機筋
- 天災・テロ・戦争
「有事の円買い」と言われている日本円通貨の立ち位置
近年のドル円推移を見ると、円高円安の乱高下が続いています。特にリーマンショックやギリシア危機、EU離脱
発表など世界情勢に不穏な問題が生じた際、急激に円高傾向にあることがわかります。なぜ、このような不安定な
タイミングで円の需要が高まるのでしょうか。原因ははっきりとしていませんが、「有事の円買い」と呼ばれてい
る現象が起こっているからだと言われています。日本円は世界的にも安全資産と思われているので、リスク回避と
して円の需要が高まり、円高になるという説が有力です。また、国内で大震災が起きた際は、日本を不安視して円
安になりそうですが、実際は円高の傾向でした。これに関しては、銀行や保険会社が日本国内に円を買い戻したと
いう説や、投資筋の動向とも言われています。
安全資産の立ち位置が今後も続くのか、「日本円」が持つ2つの顔
過去のドル円推移から分析すると、日本円は世界的に安全資産と認識されている傾向が見えました。 しかし、今後も同じ安全資産の立ち位置でいられるのでしょうか。経済大国とされている日本の「明と暗」を比べてみます。
日本円が安全資産と評価されているのは、これまでの実績によるものです。米国・中国について日本はGDPの上位国であり、 堅調に経済成長を続けてきました。しかし、一方で問題も山積みしており、将来の不安材料を抱えています。 1000兆円の国債のほとんどは国内の銀行が買い手とはいえ、外国人の保有率も徐々に高まっています。そして、一番の問題は人口の減少です。
人口のピークをすでに超え 人口減少・高齢化が進んでいます
人口減少がもたらす影響は様々あります。まずは、生産年齢人口減少、つまり若者による労働力の低下です。 これに伴い、社会全体の資産は減少をしていきます。社会保障の担い手が減っていくなかでも高齢化は進み、 医療・介護負担は増加をしていくので、ますます社会全体の資産減少に拍車がかかると言われています。 推計でも、これから数十年後から急激に人口減少が進み、このような現象は日本が初めて直面する大きな問題です。
人口減少がもたらす問題で将来的に経済成長は停滞する見通し
投資をしないリスクを知り 自分に合った資金運用をしましょう
「日本円だけを保有する」ことは「投資をしないリスク」も抱えるということ
マイナス金利政策の日本ですが、金融機関に集まる預金額は年々増え続け、
2017年には過去最高の1053兆円の預金残高であると発表されました。日
本人は投資に消極的で、総資産のほとんどを預金や現金で保有しています。
しかし、銀行に預けていても金利はほとんど付きませんし、円安に進んだ
場合、日本円だけ保有することはリスクとなります。輸入品に頼っている
日本で生活していれば、円安の影響は必ずあるからです。
円安でも強い資産を形成するための対策とは
円安になっても資産を一部を外貨で保有していれば、資産を減らさず、状況次第では増やすことにもつながります。 外貨獲得の方法としては、海外預金・FXなどがありますが、海外預金は比較的長期運用で、FXは短期運用となります。 海外預金は日本の銀行よりも金利が高いこともあり、上手に運用すれば利益が生まれますし、預金に慣れてきた日本人には難しくもありません。デメリットはFXよりも手数料が高いことですが、FXはギャンブル性が強く、24時間眠らず動き続ける市場と向き合えるかが大切で、自分にあった運用を見極めることが大切です。
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